2016年3月4日
京都大学総長 山極壽一 殿
学生担当理事・副学長 川添信介 殿
吉田寮自治会
抗議声明
2016年2月29日、学生担当理事・副学長川添信介は吉田寮自治会に対して、吉田寮現棟の老朽化を理由に吉田寮の入寮募集の停止を「要請」する通告「吉田寮の入寮者募集について(通知)」を発出した。また、翌3月1日には、この通告を京都大学公式ホームページに掲載した。それと同時に、各寮の概要を紹介するページから各寮の募集要項をすべて削除し、さらに吉田寮の特記事項として今回の通告の内容を掲載した。この件について、吉田寮自治会は2016年3月2日付で抗議声明を提出した。それに加えて、3月1日には教育推進学生支援部厚生課窓口での抗議活動、3月2日には三浦学生部長との話し合いを行い、大学当局に対して強く抗議の意を示した。
さて、こうした一連の抗議活動の中で新たに明らかになった事実が3点ある。まず抗議活動の初めに吉田寮自治会は、今回の通告について話し合うため、川添理事に取り次ぐように要求した。それに対し、厚生課及び三浦学生部長は、川添理事から「学生がこの件について面会を求めてきても自分に取り次がないように」という指示を受けていると述べ、吉田寮自治会の要求を拒否した。
次に、この通告やホームページの改変について、これが一体どういうプロセスで行われたのかを追及した。すると、2月29日に山極総長、数名の理事、総務部長、学生部長が出席する「会議」が開かれたことが明らかになった。三浦学生部長曰く、その「会議」は名前も付いておらず、部局長会議などのように公式なものでもなく、議事録すらとられていない「会議」であった。その「会議」において川添理事から、今回の通告を出すこと、ホームページに通告を掲載すること、各寮の紹介のページを改変すること、川添理事は学生の面会要求を拒否していくことが確認された。そしてその「会議」のあと、三浦学生部長と厚生課に対して上述のとおり指示をしたとの説明であった。
最後に、川添理事から厚生課に対して、「吉田寮の入寮募集に関する問い合わせに対しては、大学当局が通告を出していることを伝えるように」との指示があったことが明らかになった。
吉田寮自治会は、新たに明らかになったこれらの事実に対して、強く抗議する。
まず、川添理事が学生からの面会・話し合いの要求を取り次ぐなと厚生課や学生部長に指示している件についてであるが、これは断じて許すことはできない。吉田寮自治会と副学長が結んできた確約には、何か問題があるときは当事者と話し合い、合意のうえで決定することが明記されている。そうでなくても、大学が民主的な在り方を志向するならば、当事者の意志を無視して一方的な決定を行なわないという原則は守られるべきであり、川添理事は吉田寮自治会との話し合いに応じるべきである。しかし、川添理事はそれと正反対の態度をとり、さらに2月29日の「会議」において、山極総長やほかの理事たちもこの姿勢を容認した。挙句の果て、川添理事は、三浦学生部長や厚生課に対して、当事者の批判から総長や理事たちを守る単なる「壁」になるように指示をしている。これは学生部長や厚生課に対し、学生担当理事自ら「学生対応窓口としての職務を放棄せよ」と命令しているに等しい。総長や理事たちのこのようなやり口は非常に卑劣である。吉田寮自治会は川添理事に対し、三浦学生部長や厚生課への指示を撤回し、吉田寮自治会との団体交渉に応じるよう要求する。
なお、今回の抗議行動の中で、川添理事の意向として「少人数の代表者との話し合いであれば応じる」ということが伝えられた。しかしこの数十年に渡り、吉田寮自治会と大学当局は、あらゆる当事者が参加できる公開された場での議論(団体交渉)により問題解決をはかってきた(このことは確約にも明記されている)。関心のある当事者を説明・話し合いの場から排除することは、多様な立場性をもつ多数の寮当事者が自らの与り知らぬところで物事を決定されることにつながり、極めて問題である。
話し合いの形式に関する大学当局の「提案」を話し合いに応じる「条件」として提示すること自体、甚だ不誠実な対応であり確約にも違反する。まして、殊ここに至っては「通知」を一方的に出し且つ同時に話し合いに、到底受け入れがたい条件を課すことで、募集停止問題をいわば「人質」にとって大学当局の提示する条件を呑むように脅迫しているに等しい。
吉田寮自治会はこのような当局の卑劣な姿勢を厳しく批判し、川添副学長が公開の場で今回の募集停止「要請」について説明し、話し合いに応じることを要求する。
次に、大学当局の一連の行動が、総長や理事数名による「会議」で決定されたことについてであるが、これは吉田寮自治会と大学当局の関係の問題に留まらず、京都大学当局内の民主的意思決定プロセスとしても大きな問題がある。当局内部のいかなる規定もその位置づけを明記しておらず、またこちらが問いただすまではその存在も公にされておらず、あまつさえ議事録すら存在しないような「会議」は、京都大学当局内の民主的意思決定プロセスの埒外に位置する「私的な談合」の場であると言わざるをえない。吉田寮に直接関わる当事者のみならず、大多数の教職員らをも排除した今回の決定は、「大学当局の独走」ですら最早なく、山極総長・川添理事ら「執行部の独走」にほかならない。
こうした「会議」によって閉鎖的に決定された吉田寮自治会への通告は、自治会のみならず、京都大学の全構成員を愚弄する行為である。今回の一連の決定について全て撤回すること、ならびに今後このような私的な談合で、吉田寮に関する事項をはじめとして、京都大学に関することがら一般を決定しないよう強く要求する。
最後に、厚生課に対し入寮希望者からの問い合わせへの対応を指示していたことについてである。これは吉田寮の入寮募集を妨害する行為として断固として抗議する。これについて大学当局は「単に事実を伝えているだけだ」と弁明している。だが、入寮募集についての問い合わせに対して「大学としては吉田寮自治会にこのような要請をしている」と通告するなら、そのことは実質的にどのような効果をもたらすだろうか。こうした対応が入寮希望者を萎縮させ、入寮を断念させてしまうことは十分に想定される事態である。とりわけ経済的な事由によって入寮を切実に希望する者にとっては、このような対応が京都大学への進学・在学そのものをも断念させることにつながるだろう。学生に対する非人道的な対応が指示されているという事実に対して吉田寮自治会は強く抗議の意を表明する。
大学当局が「今回の通告はあくまで要請である」と弁明しているのは事実である。しかし「要請」をしても大学当局自身が話し合いに応じず主張を一方的に押し付けるならば、それは「命令」であり、また実質的な入寮妨害的対応を行っている以上「要請」は「決定」と同一の効果をもつ。
吉田寮自治会はこのような一方的かつ正当な根拠を欠いた命令に従うつもりはない。3月2日付で発表した抗議声明でも述べたとおり、吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施する。これに対するいかなる妨害行為も許さないし、新入寮生へのいかなる弾圧に対しても抗議していくことを宣言する。