吉田寮自治会は2025年8月25日付で「京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解」を発表しました。
国立大学法人京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の
和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解
2025年8月25日
吉田寮自治会
国立大学法人京都大学を原告、一部の寮生・元寮生を被告とする吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、2025年8月25日、大阪高裁での和解協議の結果、双方の間で和解が成立しました。それを受けて京大当局は同日、公式HP上に文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」を掲載しました[1]。
この文書において京大当局は、「①京大は吉田寮の老朽化を懸念していた、②それでも寮生が言うことを聞かなかった、③だからやむなく大学が寮生の提訴に踏み切った」という、これまで各種の文書で主張してきた論理構成に基づき、今回の和解が大学の「方針の実現に向けた大きな進展である」と述べています。
しかしながら、こうした記述は、誤解を招く表現を多分に含んでおり、吉田寮自治会として認めがたいものであると考えています。以下にそれぞれの点における問題点について詳述します。
①の問題点:これまで現棟の老朽化問題に真摯に向き合ってきたのは、大学側ではなく、むしろ吉田寮側です。吉田寮自治会は、現棟の老朽化問題を重く受け止め、特に2000年代以降現棟の大規模補修を検討し、大学とも協議してきました。2015年2月の団体交渉では、「大学当局は本確約末尾に示す「吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義」を認め、その意義をできるかぎり損なわない補修の実現に向けて、今後も協議を続けていく」という確約[2]を再締結し、実際に具体的な補修案についての協議へ進んでいました。
②の問題点:しかし2015年、それまで積み上げられてきた現棟老朽化対策に向けた団体交渉が、大学当局によって一方的に打ち切られました。その後も、吉田寮自治会は現棟補修のための対話の再開を繰り返し求めてきました。2018年7月の少人数交渉では寮自治会から従来提示してきた補修案に加え一部建て替え・増棟も含む具体的な改修案を複数提示し、川添信介・学生担当理事(当時)は「検討する」と述べました。しかしその後6年間、大学は一切の応答をしていません。
③の問題点:訴訟が提起される約2ヶ月前、2019年2月20日に吉田寮自治会は「吉田寮の未来のための私たちの提案」[3]を発出し、現棟からの条件付き退去を提案し、話し合いの再開を求めました。その提案を大学の基本方針に完全には従っていないという理由だけで却下し、一切の話し合いを拒んでおきながら、このように他になすすべなく提訴に至ったかのように記述するのは不当です。
和解成立の場では、大阪高裁の担当の裁判官からも「これからはお互いに相手の言い分にも耳を傾けて一つ一つ解決していってほしい」旨の発言がありました。実際に和解が成立した今、私たち吉田寮自治会は京大当局に対し、自身が過去に設定したストーリーに固執するのではなく、目の前の寮生に真摯に向き合って、現棟補修や今後の吉田寮のあり方についての対話再開のテーブルにつくことを、改めて求めます[4]。
[1] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2025-08-25
[2] 「120212確約」(https://yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/)
[3] https://yoshidaryo.org/archives/seimei/495/
[4] これらの吉田寮自治会の立場は、私たちが8月25日に発表した声明「吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の「和解」について」(https://yoshidaryo.org/archives/seimei/3777/)に詳述しています。
