吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟 第一審・判決を控えて
2024年2月1日
吉田寮自治会
今月16日、ついに5年近くに及んだ「吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟」の第一審・判決が言い渡されることとなった。吉田寮自治会は、訴訟前から学生担当理事ら当事者との話し合いを一貫して要求してきた。大学法人による提訴後も、訴訟の取り下げと話し合いの再開を求める要求書を、再三にわたり京大法人役員会宛に発出した。しかし、これらの要求は一貫して黙殺され、淡々と口頭弁論が積み重ねられてきた。改めてこの度、原告たる京大法人に対し、訴訟の取り下げおよび話し合いの再開を要求する。
原告である京大法人が寮生に対し行ってきたのは、「SLAPP」とよばれる恫喝訴訟である。これは、権力を持つ側の者が持たない側の者を威圧するために起こされるものであり、仮にも学府たる機関が行うべきものではない。
原告側は「安全確保の観点からこれ以上先送りにできず、やむなく提訴に至った」[1]と述べているが、そもそも我々寮自治会も数十年にわたり老朽化を懸念し、大学側と補修についての話し合いを積み重ねてきた。2012年には後述する「確約」において、現棟の大規模補修でいったん合意を見た。こうした確約を反故にし、寮自治会からのあらゆる提案を黙殺しているのは、ほかでもない大学側である。
2015年まで、寮自治会と学生担当理事との間では、団体交渉形態の話し合いにより「確約」と呼ばれる約束を交わし、合意形成を図ってきた。そして2012年には、吉田寮・食堂の大規模補修および新棟の建設決定という結果がもたらされた。原告側は、団体交渉の結果締結した確約について、「自治会の圧力のもと半ば強制的に署名させられた」[2]ものだと述べ、確約の無効性と交渉の不可能性を主張しているが、そのことは実際に団体交渉に関わったことのある尾池和夫元総長により否定されている[3]し、赤松明彦元副学長も京大の広報誌「紅萠」において団交への意気込みを語っている[4]。このことからも、話し合いによる問題解決は、決して不可能ではないと断言できる。そもそも、確約は法人化以降も教授会で報告されていたほどの、法人の重要な決裁事項である。学生担当理事が変わったから確約が無効というのは、あまりにも無責任である。
一審の判決が出ると、訴訟手続きとしては二審に移行する可能性がある。ここで表明したいことは、被告側が控訴という選択を下した場合であっても、それが本問題の訴訟での解決を求めての行動ではないということである。我々が控訴する場合、その主たる目的は、大学側へ交渉の呼びかけを粘り強く行うために、早期の段階での明渡の執行を回避することである。控訴審の期間にも、我々は話し合いの再開をより強く求めていく。
繰り返しになるが、我々が大学側に求めるのは、あくまで訴訟の取り下げと話し合いの再開である。 第一審にてどのような判決が下されようと、訴訟の取り下げと話し合いの再開を求めていくことに、今後も変わりはない。
[1] https://www.sankei.com/article/20190726-2YMARFH6U5P3JKADFEMKPPWYW4/より。傍点引用者。
[2] 吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟 甲26号証より。
[3] 尾池和夫元総長は熊野寮自治会との団交経験があり、原告側の主張に関して、取材において「勝手に何を言ってるんや。歴史を書き換えるのか」と述べている(参考:https://synodos.jp/opinion/society/22875/)。
[4] 京大広報No.664(2011年2月), p.3361より。参考:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/196418/1/kukoho664.pdf