🐾吉田寮ねこねこ超会議2🐾
――猫が語る学問の自由と自治@時計台記念館屋上――
主催 吉田寮の行く末を憂うるネコ科連絡協議会(C連協)
共催 京大猫科協同組合(京C組)
京大全ねこ自治公認同猫会
協賛(順不同) 神楽ヶ丘緑地野生動物連盟
自由を守るネコ科有志斗争委員会(C斗委)
開 会 あ い さ つ
アレク「みなさま、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございますニャ!ただいまから第二回「吉田寮ねこねこ超会議――猫が語る学問の自由と自治」を開催するニャ。わたくしは司会のアレクと申しますニャ。2018年まで寮猫として吉田寮に住んでおりました寮猫OPですニャ。本日は寮猫とその他六匹の方々に御臨席をいただいておりますので、御到着順に御紹介いただきますニャ。」
ボンちゃん「寮猫のボンですニャ。南寮です。よろしくニャ。」
ところてん「中寮のところてんですニャ。」
じゃじゃ丸「北寮のじゃじゃ丸だニャ―。」
トド「公認同猫会委員長のトドですニャ。総人図書館の裏の藪に住んでいますニャ。寮外猫として寮裏門のエサ場を利用させていただいておりますニャ。」
ちゃっぷりん「京猫連会長のちゃっぷりんですニャ。学内のねこハウスに住んでますニャ。我々が直面している問題を広く学内で共有したいと思いますニャ。」
とらちゃん「C斗委のとらちゃんですニャ。自由を重んじる学風を何とか守りたいニャ。」
アレク「また、学外からの特別招待者として神楽ヶ丘緑地野生動物連盟会長の狸さんにも来て頂いていますニャ。」
狸「近隣住民の狸です。吉田寮にはよく遊びに来ます。どうぞよろしくお願いしますポコ。」
アレク「それでは、開会に当たりまして、主催者を代表し、南寮猫長のボンちゃんからご挨拶をいただきますニャ~」〔ボンちゃん 登壇〕パチパチ
ボンちゃん「皆様、こんニャちは! 御紹介をいただきました南寮猫長のボンと申しますニャ。本日集まってもらったのは、昨今、国会をにぎわせている日本学術会議の六学者任命問題について協議するためである。目下の状況として、政治の不当介入によって学問の自由が危機に晒されており、文学部のキリスト教学研究者である芦名定道先生も任命拒否の憂き目にあっている。今日は学問の自由が何故大切であるのか、改めて考え直し、その必要性を相互に確認する機会としたいと思う。首相・政府の学術任命に関する恣意的権力行使という政治問題こそが焦点であるのに、いつのまにか学術会議のあり方について、科学技術大臣と学術会議会長が「真摯に」話し合いを続けるさまを呈しているのは一体なんなのか。本日は皆で様々な意見を出し合いましょう。」パチパチ
日 本 学 術 会 議 任 命 問 題
ところてん「ではさっそく、任命拒否問題について話していこうか。」
アレク「そうだね、そもそも任命拒否問題とは、今年2020年9月に菅義偉首相が、学術会議の推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否した問題のことだ。」
とらちゃん「現在、国会で審議が行われているね。何故任命を拒否したのだろう。」
ところてん「政府は1983年、首相の任命は「形式的にすぎない」と国会で答弁しており、野党から法解釈を変更したと批判されている。」
ボンちゃん「衆参両院の代表質問でようやく首相が国会で説明したが、到底納得できるものではなかったな。」
ところてん「菅首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と述べ、学術会議の会員構成を「旧帝国大学に所属する会員が45%」「民間出身者や若手が少なく偏りがある」などと強調し、「多様性を念頭に判断した」と、任命拒否の正当性を主張している。」
トド「しかしそれなら、なぜ元々少ない女性会員や私立大所属の候補を拒否したのだろうか。拒否された6人の中には会員が1人もいない大学の研究者も含まれており、首相の説明は矛盾に満ちている。」
とらちゃん「「多様性」という言葉がどんどん陳腐なものになっていくね。」
ちゃっぷりん「そもそも、法律の定める会員の選考基準に所属大学や地域性の規定はない。首相が言うように、学術会議に「多様性」が必要と考えるのであれば、直ちに任命を拒否するのでなく推薦の在り方を学術会議と議論すべきだっただろう。」
アレク「83年の国会答弁の件についてもう少し詳しく。」
ところてん「1983年、会員の推薦制度について、当時の中曽根首相は、聞かれてもいないのに「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と国会答弁していた。2004年の制度改正の際も、内部文書で「首相が任命を拒否することは想定されていない」と明確に記載している。これを見ればわかるように、首相が従来の法解釈を逸脱して任命拒否したことは明白だ。だが首相は、その理由を最初は「総合的、俯瞰的に」と曖昧に語り、国会では「多様性」を持ち出した。後付けの理由で切り抜けようとしている印象を拭えない。」
ボンちゃん「このまま有耶無耶にしてしまうつもりなのだろうか。」
ところてん「首相は10月26日のNHK番組で、この問題について「説明できることとできないことがある」と述べたが、任命拒否は学問の自由を侵しかねないほか、首相による違法な権力行使が疑われる問題だ。」
ボンちゃん「学問の自由を侵害する憲法違反行為なのだから、「説明できないこともある」で済ませてはならないだろう。」
ちゃっぷりん「だから、政府は問題発覚後、有耶無耶にするために、国費10億円が投じられていることを理由に会議を行政改革の対象としたんだ。年内に改革の方向性を打ち出すとして検討を加速しているよ。」
トド「アホノマスクでいくら無駄にしたんだよ…260億円ですよ! 検品だけで8億近くかかったわけだし…」
とらちゃん「しかし、これは学術会議の在り方について考える良い機会になったのではないかな。」
「「「ナンセーンス!!!」」」
トド「本当に貴様はあまちゃんだな。」
ところてん「会議の予算の多くは関係省庁から出向する事務局職員の給与などだそうだ。その運営に問題がないかの検証は必要だが、それと任命拒否は別の問題である。論点のすり替えを許してはならない。」
じゃじゃ丸「まあたしかに、日本学術会議は、2010年以降、政府の諮問が無くても出せる「勧告」を一度も出さず、お伺いを立てながら、拘束力のない「提言」ばかり出して政府と馴れ合ってる。その上、内閣府に専門家から成る「総合科学技術会議」が存在しているので、日本学術会議の内閣への助言や相談という役割は、今現在はほぼ無いに等しい。しかも、各省庁に各種審議会が設置されていて、学術会議を通した政策決定は今現在ほとんどない。結局、×極は学術会議の仕事すらろくにやってなかったわけだ。」
ボンちゃん「じゃあ、「学術会議と国大協の仕事が忙しくて、大学の仕事ができないよ~」とか言ってたあの人は、一体何をしてたのだろうね。」
ちゃっぷりん「レジ袋廃止は学術会議主導で決まった、とかいうデマもあったな。」
ボンちゃん「評判の悪かったことは全部他人のせいにするんだな。」
アレク「我々猫民が聞きたいのは、6人の任命を拒否した具体的理由であり、「多様性」といった漠然とした説明ではない。首相としても、この問題で時間を取られるのは本意ではないだろう。」
ボンちゃん「首相は、拒否に深く関与したとされる杉田和博官房副長官も加え、予算委で丁寧に説明すべきだ。任命拒否問題を放置して携帯電話料金引き下げなどの「看板政策」を推し進めても、国民の目をごまかすためとしか映らない。」
とらちゃん「挙句の果てにハンコ廃止に収入印紙廃止だからね。反発の少なそうなところに手を入れて、やってる感の演出。」
アレク「それでは、ところてんちゃん、この辺で任命拒否事件について議論すべき点について説明してもらえますか。」
ところてん「はい、10月26日に臨時国会が召集され、日本学術会議の会員任命拒否問題も重要なテーマとなっているが、争点は大きく分けて二つある。
第一に、日本学術会議法(以下、「日学法」)は日本学術会議の定員を「210人」と定めるのに対して(7条1項)、現在は任命拒否による欠員が生じ、違法状態となっていること。
これを是正する方法としては、(1)任命拒否の撤回か、(2)別の6人の任命しかない。首相には(1)の意思は今のところないようだ。ただ、首相は学術会議が推薦した人物しか任命できないため(同2項)、(2)を実現するには、学術会議に推薦のやり直しを要求せねばならない。しかし、学術会議には推薦を翻す意思はないようで、それを強引に変更させることは、次の三つの理由で不可能だ。
まず、日学法3条は、学術会議が「科学に関する重要事項の審議」(1号)・「科学に関する研究の連絡」(2号)という職務を「独立」して行うと定める。候補者選定は、ここに言う学術会議の職務の一つと解すべきだろう。また仮にそう解釈しないとしても、科学者の研究・業績の評価が学問に基づく判断である以上、3条の職務独立の趣旨は、候補者選定にも及ぶと解される。首相が自分の望む推薦基準を示し、推薦をやり直させるのは、学術会議の独立を侵し、3条違反の可能性がある。
次に、日学法17条は、科学者としての「研究又は業績」に基づき候補者を選定すると定める。
首相が、研究や業績とは無関係な「政治的見解のバランス」や「首相自身の総合的俯瞰的視点」等の基準による推薦を要求するのは、17条の定める基準に反し違法だ。仮に首相が任命拒否された6人の候補と同等の研究・業績のある別の人物の推薦を要求したとしても、学術会議側が、「研究・業績の観点から、そのような人物はいない」と判断すれば、それ以上の要求はできない。
さらに、日学法は、首相が再推薦を命じた場合に、推薦をやり直す法的義務が学術会議にある、とは書いてない。学術会議が新たな推薦を拒否すれば、首相は別の者で欠員を埋めることはできない。」
ちゃっぷりん「なるほどニャ―」(棒)
ボンちゃん「それなら国会では、首相に「どのようにして7条1項違反の欠員状態を是正するのか」と問うべきだろう。結局のところ、(2)の方法は違法または不可能で、欠員による違法状態の是正には、(1)任命拒否の撤回以外の選択肢はない。」
アレク「二つ目の争点についてはどうですか。」
ところてん「第二に、このような検討の上で、従来の政府解釈を変更すべきではないと言うことだ。政府は、首相の学術会議会員の任命権は形式的なもので、推薦を拒否することは想定されないと解釈してきた。学術会議が定員と同数の候補者を推薦した場合に、7条1項違反の欠員を避けるには、首相が推薦通り任命する以外に道はない。従来の政府解釈は、条文の必然的な帰結であって、この解釈を変更することは、解釈の限界を逸脱した強弁でしかない。
国家公務員の任免は内閣・大臣の権限だという憲法原則に照らすと、こうした日学法の構造に違和感を持つ人もいるかもしれない。この点、政府は、学術会議の人選の自律を、学問の自由によって根拠づけてきた。」
ボンちゃん「先の大戦での政治主導の学問研究による惨禍に対する反省から、日本学術会議が発足したという経緯と照らしてみれば当然のことだ。」
ところてん「10月28日の野党代表からの質問で、「学術会議法7条2項は、『推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する』と明記しており、推薦された方を任命しないことは、条文上明らかに違法だ。何故任命しなかったの?か」という質問が出たが、菅首相は「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではない、という点については、内閣法制局の了解を得た、政府の一貫した考えです」とか、「任命を行う際には、総合的、俯瞰的な活動、すなわち、専門分野の枠にとらわれない広い視野に立って、バランスの取れた活動を行い」云々などと述べた。」
ちゃっぷりん「まるで独裁者だな」
ボンちゃん「票集めとか人気取りとか、非常に狭い視野の中でしか物が見えていない人がよく言うよね。」
ところてん「29日の衆院代表質問でも同様に、「日本学術会議法上、会員の任命は、必ず推薦通りに任命しなければならないわけではないという点は政府の一貫した考えだ」と述べ、会員候補の「名誉棄損にはあたらない」と強調した。」
ちゃっぷりん「ふむ。」
ところてん「井上信治科学技術担当相は29日、所管する日本学術会議(東京都港区)を視察し、会議の在り方を巡り幹部と会談した。梶田隆章会長は「幹事会を中心に在り方の検討を本格的に始める」と述べ、年末の政府への報告に向けて作業を加速させる考えを示した。井上氏は「意見交換しながら、共に期待される役割を考えて検証したい」と語り、双方で連携して取り組むことを確認した。」
ボンちゃん「何やってんだよ、「問題提起」だなんて、ノコノコ出向いていくなんてアホかな。」
とらちゃん「ナンセーンス!」怒
ところてん「菅義偉首相は、30日午後の参議院代表質問でも同じ答弁を繰り返し、「現在の会員は、旧7帝国大学所属が45%、それ以外の173の国立・公立大学所属は17%、615ある私立大学所属は24%にとどまっている」と指摘。会員に偏りがあるとの持論を強調した。会員の任命にあたっても「推薦のとおりに任命しなければならないわけでないというのが内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した見解」との従来の見解を繰り返した。」
トド「もういいって。」
ところてん「そして、菅首相の「全集中の呼吸で答弁させていただきます」」(失笑)
ボンちゃん「極めて幼稚だね、うんざりする。」
ちゃっぷりん「同日の答弁で、菅首相は「私は、加藤陽子先生以外の方は、承知していませんでした」というが、では業績のある科学者は、誰がどう判断したのだろう。自分で判断したり、名簿を見ていなかったり、大臣が判断したり、コロコロ変わるから意味不明だ。」
アレク「菅首相は「人事に関することで、答えは差し控える。多様性が大事だと念頭に置いて任命権者として判断した」としているが、6人には安保関連法や共謀罪の新設に反対したことが共通する。首相周辺が気にくわない学者を意図的に弾いたという感じだろう。」
ところてん「菅首相は「閉鎖的で、既得権益のようになっている」と述べ、会議のあり方に疑問を呈したが、一体どういう点を指して既得権益呼ばわりするのか。お前が言うかと思う。」
ボンちゃん「うーん、しかし、学術会議の任命拒否問題で、105人の推薦名簿を見てもいないのに既得権になっているとどうして言えるのか」
アレク「それに除外した6人のうち5人を名前も業績も知らないのになぜ拒否したのか。菅首相の答弁は矛盾だらけだ。一つ嘘をつくとどんどん嘘をつかなくてはならなくなる。泥沼から抜けるには正直に話すことだ。」
ところてん「政府は11月4日の衆院予算委員会で、日本学術会議の会員任命を巡り、法解釈が以前から一貫しているとする主張を裏付ける記録や根拠を出すよう求められたが、示せなかった。」
じゃじゃ丸「そりゃ出せないよな。」
ところてん「政府が1983年に、首相による日本学術会議への指揮監督権を否定する文書を作成していたことが11月4日に分かったんだけど、これは首相の「一定の監督権行使」を認め、会員候補の任命拒否を可能とする見解をまとめた18年の内閣府見解と齟齬を来しており、過去の国会答弁と同様、矛盾しているとの批判が強まりそうだ。」
アレク「内閣法制局の『法律案審議録』に収められた「日本学術会議関係想定問答」。首相は「日本学術会議の職務に対し指揮監督権をもっていないと考える」と記されている(国立公文書館所蔵)今回の文書により、監督権を巡っても、ひそかに解釈を変更していた可能性がある。」
ところてん「自民党の伊吹文明元衆院議長は「『学問の自由』といえば、みんな水戸黄門の印籠の下にひれ伏さないといけないのか」と苦言を呈した。」
アレク「マジで言ってんのかね。なぜ水戸黄門とか、無条件でひれ伏すとか、そんな低次元の話になるんだろう。」
ボンちゃん「実力行使できる政治組織が学問の自由を守るための組織に不当に介入したという点が問題なのに、むしろ構図が逆ではないか。」
ちゃっぷりん「そうそう、印籠を見せて「ひれ伏せ、言うことを聞け」と言うてるのは菅首相の方でしょ。」
ところてん「7日、首相官邸が日本学術会議の会員任命拒否問題で、会員候補6人が安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送る判断をしていたことが分かった。安全保障関連法や特定秘密保護法に対する過去の言動を問題視した可能性がある。複数の政府関係者が明らかにした。」
とらちゃん「反政府運動!?」
ちゃっぷりん「カジュアルな反政府運動やな。」
ところてん「学術審議会任命問題、問題は6名を任命しなかった政府の「意図」が何だったかではない。政府が6名を任命しなかったことそのものが、学問的基準で行われるべき選択への「政治的介入」であり、事実として、政権の意に沿わない学者の排除であるということ以外にない。」
アレク「6名拒否について総理に説明し、そのプロセスの当事者である杉田官房副長官を国会で説明させて困る理由があるのなら、それについて是非知りたいね。」
トド「ああ、それについても菅首相は頑なに拒否しているね。」
アレク「新会員候補の任命拒否問題をきっかけに、自民党は日本学術会議のあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)を設置し、年間約10億円の国費を支出する妥当性や組織形態の検証を進めている。年内をめどに政府に提言を出すと言っているが、どういう提言になるのだろうか。」
ところてん「下村博文大臣は毎日新聞のインタビューに答えて、「全員任命なら欧米型の非政府組織にすべきだ」とか「軍事研究否定なら、行政機関から外れるべき」と述べているね。」(毎日新聞2020年11月10日付)
ボンちゃん「マジで言ってんのかよ!」
ちゃっぷりん「本音がでてるなあ…もう大臣がこういうことを言っても許される世の中になってしまったんだなあ。」
とらちゃん「軍事研究を進めて経済活性化というのは、自民党の方針でしょ。政権の私物化も甚だしいね。」
ところてん「11月11日午前の衆院内閣委員会で、日本学術会議事務局幹部は学術会議の会員任命を拒否された6人について、再び政府に推薦することは排除されないとの認識を示した。」
とらちゃん「ふむ。」
ところてん「一方、加藤勝信官房長官は再推薦された場合の対応に関して回答を避けた。」
ボンちゃん「まあ拒否されたら、全員辞めればいいわな。」
トド「12月4日には、菅首相が学術会議の件について記者会見で問われ、「反発が大きくなることはわかっていた」と答えているが。」
ところてん「反発が大きくなると「思っていたかどうか」などと「お気持ち」を聞いて何の意味があるのか?違法性を徹底して追及すべき。パンケーキ如きで飼い慣らされて、法律に違反してもニヤニヤ笑ってる首相を前にして、記者は恥ずかしくないのか。」
天 皇 機 関 説 事 件
じゃじゃ丸「政府による恣意的な解釈変更という点について言えば、戦前の天皇機関説事件が有名だね。」
ちゃっぷりん「天皇の政治的立場についての解釈にも触れておいた方がいいだろう。」
ところてん「そもそも天皇機関説というのは、明治憲法の解釈において、主権は国家にあり、天皇は法人である国家の最高機関であるという学説で、法学者の美濃部達吉(1873-1948)ら、一木喜徳郎()門下の学者が唱えた説である。国民の代表機関である議会が内閣を通して天皇を拘束しうるというこの学説は、1920年代においては国家公認の憲法学説であった。」
ボンちゃん「へー、それは知らなかった」
ところてん「しかし、天皇制ファシズムの台頭とともに、天皇の神格的な超越性を否定するこの説が貴族院の議場で「国体に反する」として非難され、1935年、右派国会議員や軍部によって機関説排撃事件を引き起こすことになる。その結果美濃部の三著書(『日本憲法』(1921)、『憲法撮要』(1923)、『逐条憲法精義』(1927))は発禁となり、美濃部は不敬罪で告訴され、34年に貴族院議員を辞任することになる。36年には右翼に襲撃され、負傷している。」
ちゃっぷりん「散々だよな。」
ボンちゃん「個人攻撃みたいな感じや。」
ところてん「35年8月と10月には、岡田内閣が第一次・第二次国体明徴声明を出し、政府公式見解として天皇が内閣・議会に優越することが認められたわけ。その結果どうなったかというと…」
ボンちゃん「軍部が発言力を高め、陸軍内でも皇道派と統制派の対立が激化し、226事件へと到ると。」
とらちゃん「結局、戦争への道を突き進んでいき、誰もそれを止めることができなかった。」
アレク「陸軍も海軍も予算をとらないといけないからね。公益を無視し、省益だけを追求するから、どんどん戦線を拡大し、各地で事変を勃発させてしまう。天皇の統帥権を後ろ盾にして、軍部大臣現役武官制などで内閣に圧力をかけるようになると、もうデモクラシー勢力ではどうにもならない。軍隊や警察というのは実力組織だから、強権的になってしまうと手が付けられないからね。」
ちゃっぷりん「だから何故に天皇機関説事件を持ち出してきたのかというと、理性と倫理の担い手であるはずの学者や研究者が弾圧され、学問の自由や学問研究が侵害されると、非合理的で強権的な政治勢力の台頭と管理強化、ひいては人民に対する大弾圧を許してしまうということを言いたかったのだ。」
とらちゃん「学者や研究者がみんな人格者で良心の持ち主というわけではないから、そこは注意しないといけないね。」
瀧 川 事 件
アレク「次に京大とも関係する「瀧川事件」について話しましょう。」
ボンちゃん「それでは私の方から。まずこの事件の起こった1932~33年頃というのは、司法官赤化事件など共産党や左派勢力への苛烈な弾圧が行われており、そのなかでも右翼団体の原理日本社などはリベラルな帝大教授を「赤化教授」として攻撃していた。」
とらちゃん「どこかで聞いた話だ。ネットで「反日大学」とか「パヨク教授」みたいなレッテル張りをするのと似ているな。」
ボンちゃん「32年10月に京大法学部の瀧川幸辰教授が行った講演「トルストイの『復活』に現れた刑罰思想」の中の、「犯罪は社会に対する制裁である」という点が槍玉にあげられ、国家批判的言辞が不穏当だとして、文部省が京大を批判した。」
ところてん「犯罪は社会システムの不備による綻びだという見解だね。犯罪が多発する原因は社会制度上の問題にあるというものだ。」
ボンちゃん「さらに33年3月の第64議会で政友会の宮本裕が、瀧川の著書である『刑法読本』を取り上げ、赤化教授の取り締まりを鳩山首相に求めた。それに追随して、文部省も『刑法読本』の客観主義刑法観や内乱罪及び姦通罪についての記述を攻撃し、内務大臣によって瀧川の『刑法読本』と『刑法講義』が発禁となった。続く文部省からの瀧川辞任要請を法学部教授会は一旦拒否するが、5月25日の高等文官分限委員会で瀧川の休職が一方的に決定され、それに対して法学部教授会が学問研究の自由と自治の蹂躙に抗議して、25名の教授が小西重直総長に辞表を提出した。」
とらちゃん「胸熱やな。」
ボンちゃん「法学部をはじめ、各学部の学生は学生大会を開いて、教授会支持と文部省への要請行動を行い、運動は全国に拡がっていった。世論も瀧川教授を擁護し、文部省を批判していたが、6月14日に小西総長が辞職した後、松井総長の時代に切り崩し策が行われ、瀧川教授ら7名が辞職、その他運動にかかわった学生組織も警察の弾圧によって潰された。」
とらちゃん「こういう歴史的な経緯を知ると、まさに今の我々も歴史のターニングポイントに置かれているんだなということが分かるね。」(しみじみ)
じゃじゃ丸「文学部の芦名教授が日本学術会議に会員として任命拒否された事件を思い出す。何かアクションが必要だな。」
ところてん「今の京大関係者に、「瀧川事件をみよ!大学自治を守れ!」と言いたいね。」
とらちゃん「当時の学生たちは学内で大反対集会を開催し、文部省まで直談判に行ったグループもあったようだけども。今の学生はどうだろうか。」
学 問 が 戦 争 に 協 力 す る と き
ボンちゃん「政治が学問に介入する際にどのようなことが起こるかは、先の大戦における原爆開発や731部隊における人体実験を見ても明らかだ。学問や研究は本来、非常に危険なものである。学問は応用の仕方によって、人類の幸福に寄与することもあれば、大量殺戮に用いられることもある。研究者がきちんとその用途を監視し、研究結果が人倫を踏みにじるようなことに用いられないように注視しなければならない。こういう研究をしたけど、あとは知らんよという態度は、研究者としては片手落ちだ。研究者が軍事研究に反対したり、大量破壊兵器を拒否するのは当然のことだ。」
アレク「上でも見てきたように、理性の府である大学の政治への馴致は、そのまま止まることなく、統制国家化と軍備増強による破滅へと続いている。」
ところてん「1949年に開催された第一回日本学術会議において採択された決意表明にはこうある、「これまでわが国の科学者がとりきたつた態度について強く反省し」「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の工場発達を図り」「日本国憲法の保障する思想と良心の自由、学問の自由及び言論の自由を確保するとともに、科学者の総意の下に、人類の平和のためあまねく世界の学界と提携して学術の進歩に寄与するよう万全の努力を傾注」することを謳っている(「日本学術会議の発足にあたつて科学者としての決意表明」1949年1月22日)。」
トド「日本中の大学人が肝に銘じておくべき文言だ。」
ボンちゃん「ある意味では大学や学者が政治の暴走という大きな流れを食い止める最後の抵抗拠点でありうる潜在力を有しているわけだ。逆に、大学や研究者が政治に追随してしまった場合は、大きな責任を負うことになる。」
ところてん「最初にも述べたが、学問研究というのは、本来非常に危険なものだ。これは研究者が一番よく分かっていなければならないことで、学者自身が研究による知識や成果に対しても責任を持たなければならない。だから、学者は象牙の塔にこもっていてはいけないし、ましてや積極的に悪行に手を貸すなどということは許されないことだ。真理を追究し、人類の幸福を目指す研究者としてありえないことなのだ。」
任 命 拒 否 事 件 に 対 す る 当 局 の 姿 勢
じゃじゃ丸「任命拒否問題に対する世間の反応はやや冷たいように感じるね。」
ところてん「学者は特権階級で、既得権益を貪っているという認識なんだろうな。」
トド「そこに斬りこむ菅首相流石だ!という印象を与えたいんだろう。」
狸「大学人たちは、大学で学んだり研究したことを社会に還元したいと思って大学に通っているだろうに。」
とらちゃん「なんだかやるせないね。」
ボンちゃん「学内一致団結して、この問題に取り組むべき時に、学生をいじめている場合じゃない。早く正気に戻って訴訟を取り下げ、話し合いを再開するべきだ。学内が分裂したり内紛を抱えた状態というのは、外部からの干渉や介入を容易に招いてしまう。」
じゃじゃ丸「執行部が早く正気に戻って、学生との裁判などというバカげたことをさっさと止めるべきだ。」
懇 親 会 @ 寮 食 堂
アレク「みなさん、今日はおつかれさまでした。では乾杯しましょう。」カンパーイ!
トド「酒は天の美禄だ。」
ところてん「まあどうぞどうぞ」
ボンちゃん「いやもう私なんぞは手酌で結構でございます。」
狸「いやしかし、少し寒いですな。」
とらちゃん「うーん、zZZ」
じゃじゃ丸「クリスマスツリーに上ろう。あら?」メリメリメリ
ちゃっぷりん「うわー倒れるぞー」ドグシャアッ!!!
ボンちゃん「アホか―!犬猫は医療保険がきかないから怪我したら大変なんだぞ!」
アレク「興も乗ってきたところで、本部棟に遊びに行こうか。」
トド「そうやな。」
〔 本部棟前 〕
アレク「こんニャちはー」ウィーン
ボンちゃん「とりあえず総長室に遊びに行こうか。」
じゃじゃ丸「エレベーターで行こう。」\ピンポーン、ハチカイデス/
とらちゃん「学内が一望できるね。」
アレク「ここが会議室だね、ちょっと覗いてみよう。」ガチャ
ところてん「誰もいないね。」
アレク「会議は今オンラインでやっているそうだよ。」
ボンちゃん「なーんだ。」
とらちゃん「壁がヤニで黄ばんでるね。」
トコトコ
ちゃっぷりん「ここが総長室か。」コンコン
秘書「はい、どなたですか。」
アレク「吉田寮の猫ですニャ。」
秘書「アポはとっておられますか。」
ボンちゃん「とってないですニャ。」
秘書「アポをとってからお願いできますか。」
トド「アポ―ッ!」ウギャー
ちゃっぷりん「とりあえず入りますね。」
湊総長「何ですか。」
アレク「遊びに来ました。」
湊総長「そうか。」
ボンちゃん「吉田寮の裁判取り下げてください。」
湊総長「それは担当者と話すべきやろうな。」
じゃじゃ丸「でも話し合ってくれないんです。」
湊総長「やり方がまずいんちゃうか。」
ボンちゃん「どのような条件でもいいので話し合いをと言っているんですが。」
ところてん「話し合いが再開されるなら、退去する用意はあると伝えています。」
湊総長「そうか。」
トド「何故学生と話し合いができないんですか!」
湊総長「そうやな。」
アレク「本当に学生とドンパチやるんですか。吉田寮潰しは、総長としての進退をかけてまでやる仕事なんですか?」
湊総長「それは…」
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ジャラジャラジャラ
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チュウレンポウトウヤ
ウワーオハライイカナ
~~
~
とらちゃん「ハッ!…夢か…」
とらちゃん「いつの間にこたつに…」
ジャラジャラジャラ
ワハハハ
ジャラジャラジャラ
とらちゃん「本当に潰すのかここを」
【終】
参考文献
日本学術会議>>「日本学術会議>提言・報告等」(http://www.scj.go.jp/ja/info/index.html)
天皇機関説事件>>山崎 雅弘『「天皇機関説」事件 』、集英社、 2017年。
瀧川事件>>二六会(編)『滝川事件以後の京大の学生運動 』、西田書店、1988年。
世界思想社編集部『滝川事件―記録と資料』、世界思想社、2001年。
松尾 尊兊『滝川事件』、岩波書店、2005年。