2017年12月22日: 学生担当理事・副学長への質問状

2017年12月22日

川添信介 学生担当理事・副学長 殿

質問状

2017 年 12 月 19 日、『吉田寮生の安全確保についての基本方針』(以下、「基本方針」) 並びにそれの策定・実施についての告知が京都大学公式サイト上で出された。あわせて、 これに関する通知が寮生個人宛にメールで送られた。 今回出された「基本方針」は、生活に重大な影響を受ける当事者との間に話し合いがな いまま出されたものであり、かつ内容もこれまでの議論を踏まえていない点、説明が不十 分な点がある。このような問題のある決定は、当事者の意向を無視した形で進めてよいも のであるとは決していえない。したがって、大学当局には少なくとも、寮自治会と寮関係 当事者に真摯に説明を行い、可能な限り当事者の疑問に応える義務がある。 寮自治会は 12 月 20 日に、教育推進学生支援部厚生課窓口を訪問し、これらの決定に責 任のある立場から説明するよう求めた。対応した教育推進学生支援部長の田頭吉一氏は寮 自治会からの質問に対しその場ですべてを責任もって回答することはできないとし、これ を川添副学長に引きつぐと約束した。内容については田頭氏本人がメモを取り、それを川 添理事に伝えることを約束した。大まかな内容については 20 日に電話で川添副学長にも伝 えられたはずである。

下記 1~4 の質問は、田頭氏が川添副学長からの回答を取りつけると約束した質問を整理 したものである。それぞれ質問について丁寧かつ詳細な回答を求める。また、回答におい ては以下の点を守られたい。 ・質問への回答はできるものから速やかに行い、遅くとも 2017 年 12 月中にはすべての質 問に対して回答をすること。

・万が一 12 月中に応えられない質問がある場合は当該質問ごとに回答を出せない理由を示 すこと。 ・本質問状とその回答についての大学当局と吉田寮自治会のやり取りを、大学当局は公式 サイトに掲載するなどして公開をしないこと。

1. これまでの経緯を無視していることに関して 「基本方針」にはこれまで吉田寮自治会と大学当局が話し合いによって積み上げてきた 議論・約束をないがしろにしている箇所が多く見受けられる。歴史的事実を歪曲・捨象し ているのはなぜか。

1.1. 「吉田寮生の安全確保についての基本方針」における歴史的経緯の記述について

「基本方針」の 1 段落目から 4 段落目に事実誤認がある点を認識しているか。たとえば、 2 段落目には「平成元年までの間、寮生の安全確保を実現しようと吉田寮生との話し合い に努めたが、吉田寮現棟の建物の本格的な改善整備は果たされないまま、老朽化が進んだ」とあり、自然現象のように老朽化が進んだように書かれている。しかし、これは事実 の正確な記述とはいえない。大学当局と吉田寮自治会との間でこれまで行われてきた話し 合いのなかで、大学当局が補修に難色を示してきたという事実に触れていないのはなぜか。 実際、補修案については、2005 年に大規模補修に向け、耐震調査及び設計を終えたにもか かわらず、翌 2006 年に当局の予算の都合で計画が頓挫している。さらに、赤松副学長は 2012 年、吉田寮自治会との話し合いにおいて、現棟の補修の有効性を認め、現棟の価値を 損なわない形の補修の実現に向けて協議を進めていくことに合意した。2014 年には寮自治 会が法的条件を満たす補修案を提示し、翌 2015 年、杉万副学長は補修案に同意した。この ように積み重ねてきた議論を、2015 年に就任した川添副学長が反故にしているにもかかわ らず、その事実を捨象しているのにはどのような理由があるのか。

1.2. 入寮募集について

「基本方針」では、2018 年 1 月以降は、誰も吉田寮に入寮することはできないとされて おり、これは 2018 年 4 月以降入学する学生が入寮できないということを意味する。また、「基本方針」では「正規学生」には代替宿舎を用意するとしているが、新たに入学する学 生はこうした保障から排除されている。これは、様々な立場の人に入寮を認めてきた吉田 寮の入寮選考権を侵害しているのみならず、経済的に不安を抱える人に京大で学ぶことを 断念させることにもつながりうる。どのような理由から、このような決定を下したのか。

1.3. 正規学生/非正規学生を区別していることについて

「基本方針」では京大に 2018 年 4 月の時点で「正規学生の学籍を有する吉田寮生」につ いてのみ、代替宿舎を用意するとしている。このように、学籍の性質による区別を設けた のはどのような理由からか。これまで、寮自治会との話し合いのなかで、このような区別 を設けてこなかったにもかかわらず、そうした歴史を無視して新たな区別を設け「非正規 学生」を住居保障の対象から排除するのはなぜか。

1.4. 吉田寮自治会が出した補修案について

上述したように、吉田寮自治会は大学当局に対してこれまで補修案を出してきたにもかかわらず「基本方針」ではそれについての言及がない。これは大学当局はいったん合意した補修案を取り下げるということを意味するのか。仮に取り下げるということであればそれはなぜか。

2. 通知の決定プロセスについて 「基本方針」は 2017 年 12 月 19 日開催の部局長会議において協議の上、同日開催の役員 会において決定されたとのことであるが、決定に至るまでの経緯・過程をより詳細に開示 せよ。当該文書の原案の作成に関わったのは誰、どこの部署か。また、当該文書に書かれ ている方針の方向性を大まかに決めたのは、いつ、どのような会議体においてか。その会 議体の構成員も明らかにせよ。

3. 2018 年 9 月を期限とする退去の要求について 「基本方針」では 2018 年 9 月末日までに、現在吉田寮(現棟と新棟の両方)に居住して いる者は退舎しなければならないとしている。さらに寮生に送られた通知では、「退舎期 限」以降に吉田寮に居続けることは不法占有となると述べられている。このような決定を 下したのはなぜか。

3.1. 2018 年 9 月(一部 3 月)を退舎期限としている理由について

「基本方針」では 2018 年 9 月末(2018 年 4 月時点で「正規学生」の学籍を有しない学生 は 3 月末)が「退舎期限」に定められているが、どういう理由から 9 月末(3 月末)を期 限に設定したのか。10 月以降に現在の建築物をどうするかは検討中とのことであるが、ど のようなプロセスで、どのような案の検討を進めているのか。

3.2. 「不法占有」とは

「退舎期限」以降、吉田寮に居続けると「不法占有」になるとされているが、これはどのような法的根拠があるのか。「不法」とは、どういった法律を根拠にしたもので、どういった事態を指すのか。また、どのような状態が「占有」にあたるというのか。仮に「不法占有」をしていると大学当局がみなした場合、裁判に持ち込むことも考えているのか。

4. 代替宿舎について 「基本方針」では 2018 年 4 月の時点で「正規学生」の学籍を有する寮生に限り代替宿舎 を用意するとしている。

4.1. 「非正規学生」ほかに代替宿舎を用意しない理由について

「基本方針」を読むかぎり、「非正規学生」及び標準修業年限を超過している学生については代替宿舎などの住居保障は行われないこととなっている。これはどのような理由からか。

4.2. 代替宿舎の予算の裏づけについて 代替宿舎について予算の裏づけはあるのか。流動的な部分も含めてできるだけすみやかに報告せよ。

4.3. 代替宿舎の光熱水費について 「基本方針」によれば、代替宿舎での光熱水費は使用者の自己負担とされている。これまでの寮自治会との話し合いを無視して、全額自己負担を求めるのはなぜか。