京大当局による公開質問状への回答拒否および警察導入に対する抗議声明
2018年11月12日
吉田寮自治会
2018年11月9日、吉田寮自治会が展開した対話要求行動に対し、京大当局の職員から寮生に暴力を振るう、警察を呼んで寮生らを脅す、といった行為があった。このような大学の自治を破壊する行為を、我々は断じて認めることができない。現在の当局の姿勢を厳しく批判するとともに、あくまで話し合いによって「退舎期限」問題を解決し、現棟の老朽化対策を前に進めるべきであるという立場をあらためて表明する。
以下に、経緯の説明と寮自治会の見解を記す。
「退舎期限」通告から到来までの経緯
2017年12月19日に京大当局が「吉田寮生の安全確保についての基本方針」を発表し、当事者である吉田寮自治会への事前の打診や説明、合意形成などを一切行わず、一方的に吉田寮の「退舎期限」を2018年9月末日と定めてからおよそ11ヵ月が経過した。
この間、寮自治会は、「基本方針」は確約違反であり無効であると当局に説明した。また、当局側担当者・川添信介学生担当理事が、これまた一方的に要求した「交渉に応じるための6条件」を寮自治会が全て受け入れるという大幅な譲歩をしたことで、寮自治会と当局側担当者の当事者間の話し合いの場を実現し、吉田寮の「退舎期限」問題について意見と立場が異なる両者間で、対話によって意見をすり合わせる努力を行ってきた。交渉の場では、吉田寮現棟の老朽化対策案について、寮自治会から複数の改修案を提案し、当局の見解を問うた。(ちなみに、現棟の老朽化対策については、前前任、前任の学生担当理事は、京都市条例を適用した補修案を採用することについて団体交渉を経て寮自治会と合意し、確約を結んで実現に向けて取り組んでいる途中であった)
しかしながら、寮自治会より提案された現棟の老朽化対策案について、2018年に開かれた交渉の場で、当局は「検討中である」以上の返事をしなかった。7月13日交渉では、寮自治会側交渉出席者へ川添理事が恫喝を行い、8月30日の交渉においては、川添理事の恫喝行為について話し合っている最中に当局側出席者全員が途中退席した。その後、寮自治会からの交渉要求に対して、川添理事は「話し合える状況ではない」と交渉を拒絶した。
公開質問状の提出
当局が一方的に定める所の「退舎期限」である2018年9月末日が経過し、吉田寮の生活基盤の破壊行為が当局によって行われた。具体的には、電話回線の遮断、物品支給の停止、寮内労働者の寮外への配置転換である。これらの行為について、寮自治会は、2018年10月17日に京都大学総長・教育研究評議会・学生生活委員会の三者に対して、期間決定を行ったプロセスと判断根拠について問う公開質問状を提出し、回答期限を10月末日に定めた。期限を過ぎても回答が来なかったので、寮自治会が厚生課窓口で催促した所、厚生課長補佐より「公開質問状には回答しないことになった」「回答期限と言っても、君たちが勝手に設けただけだ」とのみ告げられた。その場で回答拒否の理由や機関決定である証拠の開示を求めたが、応じられなかった。
公開の場での話し合いや、情報公開連絡会など、吉田寮に関わる当事者が直接当局側担当者と話す場を一切遮断されている現状、公開質問状の回答拒否が宛先である役職者・会議体によって本当に機関決定されたものであるのかどうか、我々には知る術がない。このため、寮自治会は、11月9日の学生生活委員会の会議の前後に、出席する教員らに直接、以下の内容を話しに行った。すなわち、公開質問状回答拒否の判断理由を問い、「吉田寮の退去期限問題」は話し合いによって解決したい意思を表示し、10月18日の当局による大学構内への警察大量導入行為について公的に説明することを要求した。
11月9日に京大構内で起こったこと
会議終了後、何人かの教員達が寮生との会話に応じる一方で、18時20分頃に委員長である川添理事、井垣達吏学生生活委員会第三小委委員長、高倉喜信同副委員長が、30人ほどの職員に囲まれて姿を表した。川添理事らに、回答拒否の理由を尋ね、寮自治会との話し合いの場を設けるよう要求しようとした所、職員たちによって寮生らが羽交い締めにされて引き剥がされ、身体を引っ張られたり押されたり、強引に掴みかかられたり、至近距離で怒鳴りつけられたりと、騒然とした状況を引き起こされた。職員たちは、自分が顔を覚えていない寮生に向かって「お前は誰や」と執拗に高圧的に聴き続け、挙句の果てに「俺が知らんかったらお前は学外者や、出て行け」と怒鳴りつけた。またある職員は「(吉田寮から)さっさと出て行ったらええやんけ」という暴言を吐いた。それでも、寮自治会が川添理事の話し合い拒絶や大学当局の公開質問状回答拒否について抗議を続けた所、18時30分頃に「学生部長に許可を得たから入構した」と述べる警察が約10名程入構し、現場にやって来た。なお、駆け付けた警察は「揉めていると聞いて来た」「話し合いできないの?」などと発言していた。
川添理事らと警察が引き上げた後、寮自治会は、「一方的に退去期限を通告され生活基盤が破壊されているさなか、話し合いによって解決するよう求めている吉田寮自治会の行動に対して、京大当局が警察に通報した」旨を職員らに抗議し、「二度とこのように警察に通報しないよう約束をしてくれ」と要求した。学生部長は「事態の収拾を付けるために警察を呼んだ」と説明し、二度と警察を呼ばないという約束はしなかった。職員の中には「警察を呼んで何が悪いんや」と野次を飛ばす者や、「吉田寮自治会と団交して、補修案に合意した前任の学生担当理事は頭がおかしかった」と発言する者がいた。学生部長が「警察を呼んでも逮捕者を出さないよう努める」と発言する一方で、またも20時過ぎには当局職員が通報し、再び警察が入構した。駆け付けた警官は呼びつけられて放置され、「どちらが呼んだのか」と訝しむような状況であった。結局、学生部長は何も説明しないまま、パトカーに乗り込み警察と共に大学を去った。
表明
上述の当局の態度に対し、我々は断固として抗議するとともに、非常に悲しく残念に思う。
大学とは、学術研究機関としての質を保ち向上させ続けていくために、公共性を志向し、様々な立場の当事者が関わり合い、対等な立場での対話によって運営していくべき場所である。となれば、国家権力などをやみくもに介入させるのではなく、意見が異なる状況でも、当事者間での対話によって合意形成する努力を大切にするのが大学のあるべき姿ではないのか。それが、先人たちの努力によって築かれてきた「大学自治」の価値ではないか。「警察を呼んで事態を収拾させよう」という姿勢は、大学自治の放棄以外の何物でもない。また「警察を呼んでも逮捕者を出さないように努める」という職員の発言は、あたかも警察権力を自分達の思うように動員しコントロールすることができるかのような思い上がりのあらわれである。
さらに、権力を持っている大学側が一方的な決定を学生ら当事者に押し付けたり、警察を呼びつけて威嚇することによって従属させようとしたりする姿勢は、教育機関としても間違っており、早急な改善が必要である。大学においては、学生ら当事者を、「一方的に決定を押し付け、従属させる対象」として扱うのではなく、意見の相違を双方の努力によって擦り合わせるための対話相手として扱うべきである。
京大当局が、寮自治会の「話し合いによって意見の対立を解決しようとする努力」を蔑ろにし続けていることを我々は批判する。そして、吉田寮自治会などの京都大学に関わる当事者の行動に対して、警察など第三者権力を導入して威嚇するような行為を二度としないと約束するよう求める。また、早急に公開質問状へ回答し、吉田寮自治会との話し合いに応じるよう改めて求める。