京都大学
学生担当理事・副学長
國府 寛司 殿
吉田寮自治会
2025年9月5日
「「吉田寮自治会」名義の入寮募集について」に対する抗議声明
京都大学学生担当理事・副学長國府寛司氏は2025年9月2日、京都大学公式HP上において「「吉田寮自治会」名義の入寮募集について」なる文書1(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、吉田寮自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。
(「基本方針」について)
当該文書において國府理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書2において、「吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると吉田寮自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て吉田寮自治会を非難するのは妥当ではない。
その上、吉田寮自治会は、2019年に現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った3。しかし大学当局はこうした提案をも却下し、一切の話し合いもないまま訴訟を起こし、現棟の老朽化対策については6年半に渡り棚上げにし続けてきた。すなわち寮生の「安全確保」を遅延させてきたのは、大学当局の方である。こうした点を無視した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。
(入寮募集について)
吉田寮自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と吉田寮自治会との間で結ばれた確約4に基づいて実施している。確約とは大学当局と吉田寮自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が吉田寮自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって吉田寮自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも吉田寮自治会が根拠なく入寮募集を実施しているかのような表現を用いているが、これは事実に即していない。
また、吉田寮自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。必要のない訴訟により学生の生活を脅かしてきたのも、また確約にも明記された吉田寮現棟の補修をサボタージュして老朽化を促してきたのも、他ならぬ大学当局である。それにもかかわらず、吉田寮自治会に責任を転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。
(入寮することを「不法」と述べていることについて)
2019年以降、吉田寮自治会は2015年竣工の吉田寮新棟(西寮)に限定して入寮募集を実施している。新棟は訴訟の対象にもなっておらず、入寮を「不法」と表現するのは根拠に欠ける。大学当局が強硬措置を正当化する理由としてきた「安全確保」の観点からも、少なくとも新棟への入寮は何ら問題ないはずである。
(入寮募集の責任について)
当該文書は、「不法」というワードによって吉田寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、吉田寮自治会は深く憂慮している。吉田寮自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。
(最後に)
大学当局が2019年に提起した吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、2025年8月、当局が現棟の耐震工事を行うという内容で和解が成立し、終結した。大学当局が当事者との対話なく強行的に物事を進めようとすることは、むしろ問題解決を遠ざけるということが、一連の経緯からも明らかである。
吉田寮自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めることを強く求める。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。