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おすすめというか自分が好きな漫画をとっつきやすいと思われる順に並べてみた。
『子どもはわかってあげない』田島列島 上下巻
お気楽ハードボイルド・ボーイミーツガール。二冊完結なので気軽におすすめできる。作者が落語の三題噺みたいに「恋愛」「新興宗教」「父親捜し」で考えた話らしい。個人的に「受け取ったものを次の人に手渡す」ということの意味をいろいろな角度から描いているところが好き。せりふ回しが印象的。
『A子さんの恋人』近藤聡乃 全7巻
アラサー三角関係の恋愛漫画。と書くとドロドロしそうな印象だけど、登場人物たちの一筋縄ではいかない性格と絵柄のおかげか生々しい感じがしない。全部の線と構図がきれいだし、小道具の選び方使い方がうますぎてほれぼれしちゃう。時間がかかっても、自分が何を考えているのか、どう感じているか考えて、言葉にして伝える。勉強になります。
『青野君くんに触りたいから死にたい』椎名うみ 7巻~連載中
切ないエロい怖い優しい面白い怖い。一つの作品でここまでいろんな気持ちにさせられるのすごすぎる。主人公のぶっ飛び具合がおもしろくて読み始めたはずが、いつのまにかこんなに切実な気持ちで主人公が自変化していくのを見守ることになるとはね。人間を好きな人が描いてる漫画だと思う。でもかなり怖いので昼に読んだほうがいいです。
『ヒストリエ』岩明均 11巻~連載中
『寄生獣』の作者である岩明均が2003年から連載している歴史漫画。古代ギリシア世界を舞台に、マケドニア王国アレクサンダー大王に仕えた書記官エウメネスの生涯を描いている。岩明均を完全に信用して読んでほしい。私はもし願いが叶うならヒストリエの完結を願います。一緒に新刊を待とう!! ちょっとグロいので注意。
『百日紅』杉浦日向子 上下巻
葛飾北斎の娘が主人公の江戸オムニバス。あっさりした描写、あっけらかんとした人間関係。初めて杉浦日向子作品を読んだとき、自分が今まで経験していないような人間関係の機微を読み取ることができなくてよくわからなかったけど、読み返すうちにだんだんわかるようになる気がする。漫画読んでいてこういう体験できることなかなかないのでスゲーってなった。あと作者が江戸風俗研究家なので言葉遣いや道具、空気感なんかもしっかり描かれていてそういうところもおもしろい。
『動物のお医者さん』佐々木倫子 全12巻
獣医学部コメディ。動物死なない恋愛要素ほぼない。ドライで低体温で愉快。絵柄が古いので読みづらいと思う人もいるかもしれない。動物のお医者さんは私にいろいろなこと(家畜伝染病予防法における法定伝染病の覚え方や犬ぞりや犬に薬を飲ませるやり方など)を教えてくれた。
『高校球児ザワさん』三島衛里子 全12巻
強豪硬式球部唯一の女子部員であるザワさんとその周囲を描き出す短編集。短編と言っても一話数ページで、映画のワンシーンみたいな話が多い。隠喩が多用され、写実よりの抒情的なカットがよく入る。自分も高校生の頃はこういうふうに景色が意味を持って迫ってくるように感じることがよくあった気がする。無口なザワさんの心情はほとんど言葉として現れず、部活仲間、地元の人、電車で乗り合わせただけの人などいろいろな人の視点からザワさんのいる世界を描写する話がほとんど。高校生の残酷さや体育会系部活動のあれこれ、また性的なことにまつわる部分でしんどくなる人もいるかもしれないので注意。
『コーポ・ア・コーポ』岩浪れんじ 2巻~連載中
大阪の安アパートに住む訳ありの人々の群像劇。ちゃんと読んでも登場人物たちが何を考えているのか、何が起こっているのかよくわからないのが現実みたいでよい。登場する人たち全員の服や癖や体つきが細かく考えられている感じがするし台詞にぜんぶ生々しいリアリティがある。冷たくて雑な人間関係。おもしろいけど現実がしんどい時はおすすめしない。昔の邦画とか好きな人におすすめかも。