○現棟の老朽化対策について
項目1:吉田寮新棟の建設及び現棟の老朽化対策を、第二期重点事業実施計画の予算執行期限である2015年度までに完了させるよう協議を続けていく。
項目2:吉田寮の耐震強度を十分なものとし、寮生の生命・財産を速やかに守るために、吉田寮現棟を補修することが有効な手段であることを認める。
項目3:大学当局は本確約末尾に示す「吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義」を認め、その意義をできうるかぎり損なわない補修の実現に向けて、今後も協議を続けていく。
○A棟(吉田寮食堂西側広場(通称「焼け跡」)に建設予定の吉田寮新棟)について
項目4:
大学当局は継続中の協議事項及びA棟の運営について一方的な決定を行なわず、吉田寮自治会と話し合い、合意のうえ決定する。また、吉田寮自治会がA棟に関して団体交渉を希望した場合は、それに応じる。
項目5:A棟の入退寮選考について
A棟の入寮者及び退寮者の決定については、現行の吉田寮自治会の方式を適用する。
項目6:吉田寮食堂の存廃について
吉田寮食堂には現存地において現在の姿を最大限残した形での耐震補修を行う。補修方法の詳細については今後も継続して協議を行う。
項目7:A棟の構造について
A棟の構造については、基本居住部分は木造2棟、そこに小規模な鉄筋コンクリート造の棟を組み合わせる混構造とする。また、A棟には地下スペースを設ける。内部構造や地下スペースの使用方法などA棟の構造の詳細については、防災等に配慮しつつ、今後も継続して協議を行う。
項目8:A棟居住寮生の経済負担について
A棟居住寮生の経済負担(寄宿料・負担区分・寄宿料免除規定など)については、今後も継続して協議を行う。
項目9:A棟建設合意にともなう他寮への影響について
A棟建設合意を理由に、他寮の寮費の値上げ・負担区分の変更や、管理強化を行わない。
○この確約書の扱いについて
項目10:確約の引継について
吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任を持って引き継ぐ。
項目11:
項目1から項目10を確約したうえで、吉田寮自治会と大学当局はA棟建設に合意し、基本設計に着手する。また、大学当局は今後速やかに吉田寮食堂の耐震補修を行う。
吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義
第一に、吉田寮現棟は周辺環境とともに、建築として優れた価値を有する。吉田寮現棟には優良な木材が使われており、居室は全て南向きに配置されている。また、三棟ある居住棟それぞれの間には豊かな樹木群が生い茂る広い庭がある。そのため、日当たり・風通しが大変優れており、寮生の快適な生活を可能にしている。また、吉田寮現棟の庭には多種多様な生命が生き生きと根づいており、その庭は吉田寮生のみならず、広くその庭を訪れる人にとって憩いの場としても機能している。
第二に、建築史から見た価値が吉田寮現棟には存在する。吉田寮現棟は明治・大正期に洋風建築が普及していくなかで建てられた和洋折衷の建築物である。この時代に建てられた西洋の建築意匠・技術によって建てられた学生寮や寄宿舎は多いが、それらのほとんどは建て替えられてしまった。したがって、吉田寮現棟は明治・大正の建築意匠・技術を今に伝える希少な建築物となっている。このように歴史を体現して今に伝える建築物は、過去の事実を知り、未来の新しい考えを生みだす拠り所として貴重なものである。なお、こうした価値はある建物単体としてではなく、吉田寮現棟と隣接する吉田寮食堂棟などと不可分の建築群として、はじめて形成されるものである。
第三に、一世紀にわたり動態保存され続けてきたことによる価値を吉田寮現棟は有している。このことは、自分たちの生活・活動の場をより良くしようとしてきた人びとの不断の試行錯誤の結果であり、またそうした結果を引き継ぎ、今後も絶え間ない努力を可能にする場として、吉田寮現棟が存在することを意味する。この価値は、たとえば吉田寮現棟の一部をモニュメントなどとして残すのではなく、使い続けることによってこそ受け継がれていくものである。この価値もまた、第二に挙げた価値と同様に、吉田寮現棟のみならず、それに隣接する吉田寮食堂棟などからなる建築群によって、体現されていると言える。
2012年9月18日
副学長 赤松明彦(手書きによる署名)
2012年9月18日
吉田寮自治会(押印)