211014裁判報告集会(対面集会)を開催する理由について
京大当局が一方的に定めた「在寮期限」(2018年9月30日)から、三年の月日が過ぎようとしています。2019年4月に始まった建物明け渡し請求訴訟は、現在も継続中で、2021年10月14日には第九回口頭弁論が開催されます。この長期に渡る一連の廃寮化攻撃によって、私たちの学業や生活は妨害され、破壊されています。
この吉田寮をめぐる裁判は、法人化以降の大学がごく一部の経営陣によって私物化され、トップダウン式経営による大学の営利企業化が進んでいることなどの問題を背景としており、学生の福利厚生の縮小や管理強化などを含めた、「学問の機会均等」や「学ぶ権利」という点で憲法違反であるような重要な問題を孕んでもいます。その上、大学法人化以降初めての学生寮を相手取った裁判であるという性格上、この裁判の結果がこれ以降の他の学生寮との裁判において、判例として適用されることになります。このように、吉田寮明け渡し訴訟は、吉田寮自治会と京大当局の単なる局地的な争いではなく、今後の大学における自治や自由の在り方とも大いに関係しているわけです。
更に、2020年以降拡大の一途を辿る新型コロナウイルス感染症は未だ終息の気配を見せておらず、多くの人々が様々な要因による経済的な困窮を余儀なくされています。このような状況下で、差別的な入寮資格の制限がなく、低廉な寮費で住むことができる福利厚生施設としての学生自治寮の重要性は益々高まっています。にもかかわらず、京大当局は学生の福利厚生よりも利潤追求的な経営判断を優先し、学生のセーフティネットを破壊しようとしています。京大当局は、感染症流行下で住居を失い、学業や研究を断念せざるを得ない学生を生じさせるという悪質性を自覚しているのでしょうか。
そして問題であるのは、大学当局が、恣意的に特定された訴訟当事者を対象とした法的措置によって、この問題を秘密裏に終わらせようとしていることです。このことは、上述のような吉田寮の公益性や、吉田寮が従来より広く学内外に開かれた自治空間であることを志向し、実際に様々な人々が関わってきたことを無視しています。
私達はこのような状況に抗ってきました。毎回の口頭弁論期日には裁判報告集会を開催し、裁判で提出された書面や進行状況に関する情報、吉田寮「在寮期限」の様々な問題性、また同時並行的に京大で進行している問題、それらに関わる多様な当事者の思いなどを、広く発信・共有し続けてきました。
しかし、残念なことにこのコロナ禍においてすら寮生を叩き出すための訴訟が取り下げられず、淡々と進行してしまっている一方で、それに抵抗するための情報発信や交流といった取り組みは、感染症の影響によって強い制約を受けている、という現状があります。私達は、このままでは密室的に、吉田寮生の追い出しと実質的な廃寮化が決まってしまうという強い危機感を抱いています。
私たちはこのような状況下にあって、感染症対策ガイドラインの作成をはじめとした寮内における感染症対策は元より、オンラインツールを用いた情報発信に尽力してきました。
しかしながら、それだけでは十分にはこの裁判の実情や不当性が発信されているとは言えない、と考えています。オンラインによる集会や交流会は、遠隔地に住む人などが参加しやすい利点がある一方で、ネット関連インフラへのアクセシビリティや住環境によって異なる参加のハードルがあります。また、できることなら吉田寮で直接相対することで、寮生や現場がもつ空気感を共有したいという思いもあります。加えて、実際に寮内感染症対策の一環としてのイベント開催の停止や寮外からの来寮制限等の措置が長期化する中で、これまで寮外から吉田寮を支援してきた人々が関わりにくくなったり、吉田寮の重要な側面である寮内外とのつながりを意識しにくい状況が形成されつつあります。こうしたことを踏まえて、2021年6月以降、刻一刻変化する感染症流行状況に留意しつつ、イベントや来寮停止の措置を一部緩和する対応を取ってきました。対面での集会は、寮内外をつなぐ一つの機会となる意義も大きいと考えています。
もちろん対面集会にも、特に現在は感染症罹患のリスクの点から、人によって異なる参加ハードルがあります。それでも、上記の理由から、分断された人々が互いに対面で情報共有や交流を行う機会を作ることも必要だと考えるのです。吉田寮では、独自のガイドラインを策定するなど慎重に準備を進めてきました。今回の口頭弁論期日には、各種の感染症対策を講じた上で、対面での集会を実施することを予定しています。
そして何より京大当局に対しては、引き続き、感染症流行下で学生の住居を奪うこの裁判を即刻中止し、当事者との交渉を再開することを、強く要求し続けます。
2021年9月25日
吉田寮自治会